西宮市苦楽園四番町で不動産売却・購入をお考えの方は、株式会社Fineblue
2021/07/22
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苦楽園四番町 【名前の由来】
天気の良い日には、大阪湾の入口まで見えようかという素晴らしい眺望の広がる苦楽園。かつて苦楽園には、この風光を愛した政界、財界の著名人達が別荘や邸宅を設けた時代がありました。一世を風靡した文壇、歌壇の花形達もそこに彩を添えていました。主な有名人は、土方久元、下村海南、谷崎潤一郎、山口誓子、湯川秀樹などがいる。当時の賑わいを伝える絵地図があります。今でいう観光イラストマップというところでしょうか。黒田清隆邸、土方久元邸、谷崎潤一郎が関東大震災で避難して来た折、身を寄せたという萬象館。与謝野晶子もくつろいで歌を詠んだいう六甲ラヂウム温泉の字も見えます。その時に詠んだと思われる
魚むれ
水にかへりし心地して
湯船にあれば春の雨ふる
苦楽園へは、開通間もない阪神電車の香櫨園駅から籠や馬車が出ていました。小型乗合自動車が登場、大正末には、阪急甲陽線が開通してバスも走り出すと手軽な温泉地として人気を集めました。苦楽園には震災前まで終戦時に鈴木内閣で国務大臣だった下村海南の旧邸宅がありました。ジャーナリスト、文化人としても活躍した下村海南は、故郷紀州を望むこの邸宅を海南荘と名付けました。歌仲間の佐佐木信綱、九条武子、岡本かの子ら、そうそうたるメンバーが訪れては華やかな歌会が開かれたという。苦楽園をスイスのロザアンの美景になぞらえた報告文。北原白秋、与謝野晶子、高村光太郎らが、活躍した文芸誌「明星」に掲載されていたのですが、ではこの苦楽園という名前は、どの様にして付いたのでしょうか?
元々この一帯は、山椒原といってミョウバン採掘がせいぜいの高台でした。明治39年、前年の阪神電車の開通に触発されたのか地主達がミョウバン温泉を開発しますが、交通の便の悪さが災いして、ほどなく失敗してしまいます。その温泉は、今の苦楽園中学校のグランドあたりに湧き出したそうです。明治44年、中村伊三郎が開発に着手しました。広い交友関係を持つ中村の宣伝活動は、功を奏し、当時の政財界の有力者、文化人達の邸宅が次々に建ち始めたのです。この苦楽園の山開きが行われた時の事です。開発者、中村伊三郎が明治維新の元勲、三条実美(さんじょう さねとみ)から譲り受けた瓢箪を飾っていました。幕末期、三条が朝廷や幕府から追われて、下関、そして九州へ落ち延びた時も愛用していた物です。この瓢箪に目をとめたのが、当時、政府の要職にあった、土方久元と東久世通福です。三条と苦楽を共にしていた二人は、瓢箪に苦楽瓢箪と名付けました。そして、この瓢箪にちなみ、この地を苦楽園と命名したのでした。一方、時を同じくしてラヂユーム温泉が発見され、開発者、中村伊三郎は、共同浴場の経営を始めました。それをきっかけに周囲には、料理旅館、ホテル、土産物屋などが続々と姿を現し、大隈重信が関西の箱根と例えた程に賑わいました。町の中心に今もかかる三笑橋。昔の山椒原という地名から付いたとも、ここから見下ろす風景が中国の景勝地、虎渓に似ているので「虎渓三笑」の故事にちなんで付いたとも言われています。昭和13年7月、阪神大水害は、西宮を襲いました。阪神大水害の後、町は、閑静な住宅街として蘇りました。水害前は、90戸程だったのですが、15年程後には、300戸、昭和44年に老松町に造成された区画が苦楽園六番町として加わった事もあって、平成に入った頃には1200戸を数える程になりました。
昔は、長春楼という旅館がありました。遊園地もあり、当時は、相当賑わったらしい。綺麗な川も流れており、蛍を見る事が出来たそうです。苦楽園の一時代を伝える建物もすっかり少なくなってしまいました。往時のたたずまいを残す建物が堀江オルゴール館としてよみがえった。この辺りは、ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士の散歩コース、博士の中性子理論は、この苦楽園の自宅で生まれました。この時の経緯が博士の随筆に紹介されています。
山口誓子が亡くなるまでのおよそ40年間住んでいた旧平井旅館は、阪神淡路大震災で姿を消しました。その跡地の一角には、この苦楽園の明るく、穏やかな風土を愛した誓子の譜碑、俳人であり妻でもあった山口波津女の碑と共に苦楽園からの眺望を楽しんでいます。
虹の環を以って
地上のものかこむ
山口誓子
毛糸編み
来世も夫(つま)に
かく編まん
山口波津女
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