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大谷町　【名前の由来】

夙川を越えて西へ芦屋市との市境、阪急電車とＪＲに面する町が大谷町です。この辺りになると、六甲山の山すそがぐっと近づいていますが、その丘陵には、おびただしい古墳が築かれていた事から、八十塚とも呼ばれていました。大谷は、この丘陵に刻まれた周囲と比べて比較的広がりのある谷です。住宅が地面を埋め尽くす以前、明治１８年の地形図では、なだらかな谷にも田が開かれていた事が伺えます。当時、この字大谷が属していたのが森具村です。町名としては、現在は姿を消した森具村ですが、実は、西宮神社の門前町として栄えた旧西宮町よりも更に古い歴史を持った村だった様です。

平成５年、元森具村の人々から伊勢講の関係資料が市に寄贈されました。伊勢講とは、住民がお金を積み立てて、代表を伊勢参宮させるという組織。地域によっては、特別な名称でも呼ばれ森具村では、江戸時代中期から近年まで存在しました。一生に一度は、と人々が思いをかけた伊勢参り。民衆が圧政に苦しみ、自由もない日常生活に耐えてきた江戸時代には、現代とは、また違う形の伊勢参りがありました。まるで封建時代の不満が爆発するかの様に周期的に起こった集団伊勢参宮（おかげまいり）です。誰にも告げず、何も持たず、旅立ち、途中の街道筋で飛び入りの参加者を増やしつつ施しや接待で伊勢参りを遂げたものです。西宮からも多くの住民が参加しましたが宿場町西宮は、食事や宿などを施す側でもありました。この費用は、大変なもので、周囲の村や伊勢講の積立からも、かき集めた様です。

江戸時代までは、西宮に属していた森具でしたが、明治に入って西宮から独立、明治１２年からは、昭和８年の西宮市との合併まで、周囲の村と大社村（たいしゃそん）を形成していました。この間、森具には、次々と鉄道や道路が開通、香櫨園遊園地が誕生、その後、住宅街へ変貌していきましたが、大谷町は最近（昭和３５年頃）までのどかな田園風景を残していました。

ＪＲの線路の下に人ひとりが通るのがやっとの小さなトンネルがあります。通称：大谷マンボウです。このトンネルは、地元の人々の要求によって昭和４年に誕生しました。マンボウと言えば、谷崎潤一郎の小説「細雪」に出てくる平松町のマンボウが有名ですが、この大谷町のマンボウも生活道として欠かせない存在です。異説もありますが、谷崎によれば、マンプウというオランダ語から出たもので、それが訛ってマンボウとなったのだとか。戦時中は、付近の人の防空壕代わりにもなっていました。マンボウの東に東海道本線から伸びている送電線があります。ＪＲ西日本芦屋変電所は、町の真ん中に位置しています。この変電所を取り囲む様に建ち並んでいるＪＲの社宅は、昭和５年ごろから徐々に建設されました。その頃の池や用水路の水は、透き通って、シジミが取れ、洗濯に利用できたそうです。付近の山では、春は、山ツツジ、秋には、松茸狩り、キツネやタヌキにばかされたというウワサがまことしやかに流れる様なそんな田園地帯であったことが、今では信じられない変貌ぶりです。

大谷町にある夙川西市民館は、住民の交流の場として平成６年に誕生しました。市民館が出来る数年前まで、ここには皿池と呼ばれる灌漑用の池がありました。その名の通り、お皿の様な美しい形の池でしたが水田がなくなり、汚染も進んだ事から、工事が行われました。その際、皿池の底が水を漏らさぬ様、何層にも粘土えお重ねた大変丁寧な造りだった事が判明、農民たちの思いが伺えました。この工事によって水辺の動植物の住処だった皿池は、多目的広場と水辺広場にからなる洪水用調整池と生まれ変わりました。現在は、普段は水のない池として、水害から住民の生活を守ってくれているのです。

まとめ

大谷町は、字大谷より命名され、大きな谷になっている事から名付けられた。